海谷山塊(新潟) 烏帽子岳(1450.5m) 2019年4月20日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 5:23 除雪終点−−6:13 北尾根に乗る(標高750m)−−6:57 1012m峰−−8:21 烏帽子岳 8:25−−8:38 1320m鞍部(休憩) 8:50−−9:26 1012m峰−−9:46 北尾根を離れる−−10:06 除雪終点

場所新潟県糸魚川市
年月日2019年4月20日 日帰り
天候快晴
山行種類残雪期の籔山
交通手段マイカー
駐車場林道除雪終点付近に駐車
登山道の有無無し
籔の有無残雪でほぼ皆無
危険個所の有無山頂直下が特に急斜面で滑ればアウトで雪質によっては厳重注意。北尾根にも部分的に急な雪壁あり。北尾根は雪庇が発達しているので雪庇崩落にも注意
冬装備ピッケル(必須)、12本爪アイゼン(必須)
山頂の展望文句なしの大展望
GPSトラックログ
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コメント砂場集落奥の林道から往復。私の実力で山頂に立てるか自信が無かったがどうにか達成。でも雪が固く締まり今シーズン最高の危険地帯だった。下界の雪が少なく藪漕ぎ覚悟だったがルート上は残雪豊富だった。実は阿彌陀岳も狙っていたが、尾根上を伝うのは無謀で諦めた。阿彌陀岳は北西尾根を伝って登るのが安全そう


土塩付近から見た烏帽子岳。山頂の雪庇が東へ極端に張り出している。現場では雪面にクラックが入っていた


除雪終点手前に駐車 駐車場所から見た烏帽子岳北尾根
緩い斜面をトラバースし西へ 熊の足跡。たぶん昨日のもの
気温は約0℃ 雪のつながりで枝尾根に上がる
枝尾根 矢印の箇所から北尾根に上がる
北尾根に乗る ニゴリ川
標高760m付近 標高790m付近。急斜面を横断し藪を登る
まだ藪は薄いようだ 標高850m付近
標高920m付近。熊の足跡 標高920m付近から見上げる。藪の中を登る
標高960m付近
1012m峰から見た昼闇山
1012m峰から南を見ている 1012m峰南直下。まだ藪は薄い
標高1050m付近。西側をトラバース中 標高1070m付近。古いスノーシュー跡
標高1150m付近。動物の足跡らしい
標高1190m付近。このまま西を巻いて1350m峰も巻いた
標高1240m付近 標高1320m付近をトラバース中
1350m峰南側から見た烏帽子岳。山頂直下の傾斜がヤバい。阿彌陀岳山頂直下はもっとヤバい
1320m鞍部から見た西側の展望(クリックで拡大)
いよいよ最後の登り 標高1360m付近。固く締まった雪壁を登る
標高1380m付近から振り返る
標高1380m付近。灌木に掴まって登る 標高1400m付近。杉に掴まって安全確保
このピークは烏帽子岳北の肩 登ってきた急斜面を見下ろす
烏帽子岳北の肩から見た烏帽子岳山頂 烏帽子岳山頂。最高点には接近できなかった
烏帽子岳山頂から見た東側半分の展望 (クリックで拡大)
烏帽子岳山頂から見た西側半分の展望  (クリックで拡大)
烏帽子岳山頂から見た後立山 (クリックで拡大)
烏帽子岳山頂から見た阿彌陀岳。尾根伝いでは山頂直下がヤバすぎる
烏帽子岳山頂から見た鉢山、雨飾山、阿彌陀岳
烏帽子岳山頂から見た北側 烏帽子岳北の肩直下の目印
北の肩からバックで慎重に下る 1320m鞍部で休憩
今回使用した12本爪アイゼン。重い! 1320m鞍部から東を見下ろす
帰りも1350m峰の西を巻く
1350m峰南側から見た米山、刈羽黒姫山
1350m峰南側から見た不動山、容雅山
1350m峰西側から北(ニゴリ川源頭)を見ている
標高1150m付近 標高1050m付近
1012m峰手前の雪の切れ目 1012m峰から見た烏帽子岳山頂(僅かに見える)
960m肩から東尾根を見ている 標高950m付近。急で藪を下る
標高790m付近。この直下が急 雪が切れた箇所が急な区間
ここで北尾根とはお別れ 真新しいデブリ。2m近い固まりもあった
標高690m付近の枝尾根から
標高610m付近 標高580m付近から見た960m肩
駐車箇所に到着 駐車箇所から見た1350m峰
駐車箇所から見た烏帽子岳(正確には北の肩)
糸魚川市大野付近姫川土手から見た烏帽子岳
糸魚川市大野付近姫川土手から見た阿彌陀岳


 海谷山塊には登山道が無い難峰が多く頭が痛いエリア。藪の厳しさを考えると残雪期が有利だが、急傾斜箇所があり滑落のリスクが高い。今回はまず手始めに烏帽子岳を目指すことにした。烏帽子岳東側の吉尾平は山スキーでは有名どころだが、稜線の東側は絶壁の連続で通常は登ることはできない。もちろん烏帽子岳は山スキー向きの場所ではないので、山スキーによる登頂の記録は見当たらなかった。

 ということでアプローチは焼山温泉起点の前烏帽子岳方面からではなく、北側のニゴリ川右岸の烏帽子岳北尾根が最も安全性が高いだろう。ニゴリ川が雪に埋もれていれば谷を遡上することができるが、おそらく今の時期は流れが出ていることだろうから北尾根を南下する計画とした。起点は砂場集落で、山スキーの記録でよく見かける場所である。おそらく集落終点が除雪終点だろう。

 今週は水曜日、木曜日と2日連続でほぼ徹夜仕事となり、そのまま出かけることになったので最初から疲労感は否めない。おまけに先週の大倉山の林道歩きでコケて痛めた左手首が完全回復に至らないままなので、枝を掴んだりピッケル使用に大いに不安が残る。昨年夏に痛めた右膝も調子が悪いままで、ヤバい山に挑戦するような体調ではないが、貴重な残雪期を逃すと面倒な山で日帰り可能で比較的手近な場所にある山は少ないので選択肢が限られてしまう。

 点検に出していた車をディーラーから回収して出発。糸魚川市街を抜けて早川沿いを上がり砂場集落へ。道が入り組んでどこが除雪されているのか不明でUターンもあったが無事に目的の林道へ。予想以上に雪解けが進んで周囲にほとんど雪が見えず、明日の行動は藪漕ぎかなぁと憂鬱になる。よって林道は除雪が無くてもかなり奥まで入ることができそうだったが、部分的に残った雪はきれいに除雪されていて標高500m付近の林道終点まで入れてしまった。ここで仮眠。さすがに寝不足で久しぶりに夜中に起きることなく爆睡した。

 4時に起床して飯を食って出発。今は5時で周囲は十分に明るい。この付近は傾斜が緩やかで斜面にはまだ多くの雪が残っていて、いきなりの藪漕ぎは回避。今朝は冷え込んで気温は0℃近く林道脇の雪はカチカチに固まっていて、先週降ったはずの山の上の新雪はもう落ち着いただろうとワカンやスノーシューは持たないことにした。代わりに今回は重い12本爪アイゼンとマジなピッケル。危険地帯があるので当然の選択だ。

 疲労の影響もあるが今日は最初からテンションが低い。この精神状態と疲労で山頂まで達することができるか分からないが、今回は偵察と割り切って行けるところまで行ってみるつもりでいこう。といいながらも地形図は阿彌陀山の範囲まで印刷してあるが。

 出発地点から北尾根まではしばらくトラバースの連続だ。幸いにしてずっと雪が続いて藪は皆無。北尾根は崖マークや傾斜がきつい場所がほとんどで、這い上がれそうな場所は標高730〜750m付近だけだろう。南に見えている鋭いピークは960m肩で、北側は崖の連続でその下をトラバース。デブリが滑り落ちた形跡が雪面に残っていた。今シーズン初めての熊の足跡にも遭遇。たぶん昨日のものだろう。この後、北尾根上でも熊の足跡を見かけたが、もう4月中旬を過ぎているので熊が活動開始して当然の時期で、久しぶりに熊鈴を鳴らしながら歩いた。

 小尾根に上がって再びトラバースして、雪がつながった標高750m付近で北尾根に乗る。ここまでは危険個所は無し、藪も無しだった。砂場集落の残雪の様子からして傾斜が急な北尾根下部には雪は残っていないと予想したが、逆にほとんどが雪に覆われていた。高度が上がると傾斜が緩んでもっと雪は増えるだろうから今回は痩せ尾根以外は藪漕ぎは無さそうだ。雪は良く締まってアイゼンの歯の跡が付くのみでピッケルも先端しか刺さらないほど。この雪質だと雪壁の通過はちと怖いなぁなどと考えるが、未だにテンションは低いままで調子が上がらない。

 北尾根は全体的には比較的傾斜は緩いが場所によっては雪壁状になった箇所もあり、そんな箇所は見上げると雪が割れているのですぐに分かる。最初は標高790m付近で、割れた雪を伝って西側の無雪帯に出て薄い灌木藪の中を登ったが、この標高では無雪期に問題になるような藪の濃さではなかった。次は標高950m付近の雪壁だが、これも無雪の小尾根を登ってクリアした。標高960m肩は往路では大きく西側を巻いたが、雪壁の関係上、これが正解ルートだった。下山時に肩から下ろうとしたが直下は雪壁で下れず、往路と同じ個所まで西へ移動することになった。

 960m肩付近からは傾斜が緩んで背の高いブナが目立つようになり完全に安全地帯に入る。1012m峰に立つと東は切れ落ちて大展望だが、南側はブナが邪魔して先の尾根の様子はあまり良く見えない。1012m峰南直下は雪が消えていたが薮は薄く、獣道らしき筋が認められた。地面が見えたのはこれが最後だった。この付近で顔に日焼け止めを塗る。何もしないとかなり日焼けするのは確実な天候だ。

 1012m峰より南側は尾根直上ではなく西側のブナ樹林帯を延々とトラバースした。過去の体験から尾根直上は藪が出ていても斜面側は雪が残っていることが多いからだ。標高1070m付近では古いスノーシューの足跡を発見。少なくとも今シーズンに1人は烏帽子岳を目指したのは確実だが、山頂に立てたのかは不明。スノーシューの足跡が判別できたのはこの付近の100mくらいしかなかった。その後は雪面が凹んだ足跡が延々と続いたが、おそらくカモシカの足跡だろう。凹んでいるということは新雪が降った後に付けられた比較的新しいものだろう。

 1350m峰はそのまま尾根の西側を巻いててっぺんは通過しなかった。1270m峰とつながる尾根やニゴリ川源頭部は立木がほぼ皆無の広大な雪原でスキー向きだが、アプローチの関係上、ニゴリ川が雪に埋もれている時期しかスキーは使えないだろう。今は北尾根下部で流れが出てしまっているのでニゴリ川を簡単には渡れない。

 1350m峰を巻いて南側に出て、初めて烏帽子岳が見えた。予想通りに山頂への最後の登りはろくでもない急斜面。東側は絶壁、西側斜面はどこも同じような急斜面で、安全ルートは無い。唯一、西斜面で灌木と杉が立ち並んでいる箇所があるので、そこを登るのが一番安全だろう。この光景を見て、それまでの低テンション状態を脱することができ、一気に気が引き締まった。そして目の前の山頂を見ると偵察の文字はかき消されて、とにかく突っ込んでみる気力が漲る。といっても私の度胸で登れるかは突っ込んでみないと分からないが。

 1320m鞍部から緩やかに登り、1350m付近から斜面が立ち上がって中断に亀裂が入った雪壁状の急斜面を登る。北向き斜面で朝のこの時間は日当たりも無いし気温が低いので、雪が固く締まってピッケルも先端しか刺さらないので恐怖感MAX。気温が上がって雪が緩んで足が潜るようなら恐怖半減なのだが。雪が割れた箇所で右にトラバースして雪の割れ目の右端で上に出ると左へルート変更し、雪に埋もれて横に寝た灌木の枝を掴まりながら高度を上げ、次は小ぶりの杉の中を登っていく。幸いにして杉には花芽は無く花粉を感じることは無かった。ここは杉の密度が高く安心して進める。ここで今回唯一の目印を目撃。たぶん赤い荷造り紐だったと思うが色が抜けて白くなっていた。

 杉を抜けると僅かで山頂の一角に到着。ここは発達した右(西)に傾いた雪庇で、ここで滑ったら止まらないだろう。これまた雪が締まって気が抜けないが、先ほど登った灌木帯や杉の中より傾斜が緩いのでまだマシだ。目の前のピークに登って山頂到着かと思いきや、まだ先に高みが待っていてそちらが正確な烏帽子岳山頂だった。今いる小ピークは烏帽子岳の北の肩と言ったところだろうか。小ピークの南には僅かに露岩が顔を出していたが簡単に通過可能で再び右に傾いた雪庇を登れば間違いなく烏帽子岳山頂だった。

 今の最高点は雪庇だが、根元にはクラックが入って危なっかしくて立ち入る勇気は無かった。後から写真で確認したが、最高点は間違いなく空中にはみ出していた。立木皆無どころか今は小灌木さえ見当たらない雪庇のみなので遮るものの無い大展望。目の前には阿彌陀山が聳えるが、尾根上を伝う場合、まずは烏帽子岳南直下が切れ落ちて進むことは不可能だった。地形図では崖はないのだが。また、阿彌陀山山頂直下は烏帽子岳以上にとんでもない傾斜で、雪が付いた状態では私の度胸では突っ込むのは不可能。阿彌陀山山頂から北西に延びる尾根を伝うのが正解だろう。

 北の肩直下の急斜面を下ることを考えるとのんびり休憩する気にもなれないため、展望写真を撮影して早速下山開始。灌木帯をバックで下った後の雪壁下りが最大の難関で、雪が固すぎてピッケルが刺さらず神経をすり減らした。ここで落ちなくてよかったぁ。1320m鞍部のブナの根元で休憩。無風快晴で快適だった。眼下には小烏帽子岳と吉尾平。今日は山スキーヤーが入っているだろうか。焼山も昼闇山もまだまだ真っ白だ。出発時に今シーズン2回目の麦わら帽子を被った。

 帰りは北尾根のトラバースを最小限にした以外はほぼ往路を戻る。雪が緩んで多少の踏み抜きはあったが、ワカンやスノーシューは不要なレベルであり、そろそろ残雪期も終盤戦に入ったと言えよう。これからは1週間で急激に雪解けが進んで尾根上の藪がどんどん出てくる時期でもあり、雪のうまみが味わえる山も1週間で急激に減っていく。アルプス級以外では残雪シーズン終了まで間もなくで、大型連休中はどこに登るか頭を悩ませそうだ。

 960m肩では東尾根を下れないか覗き込んでみたが、無理すれば下れないことは無さそうだが雪庇の壁でちょっと厳しいのでパスし、そのまま雪壁上端を西へトラバースして往路に戻った。往路は雪が固く締まってほとんど足跡が残っていなかったが、周囲の中で最も傾斜が緩い箇所を通っているので復路も自然と往路に乗ることができた。

 北尾根を離れてからの緩斜面帯トラバースは目印が乏しく車も視認できないため、最後はGPSのお世話になって駐車箇所に到着。林道にはジモティーと思われる軽トラが駐車していて若いあんちゃんとしばし立ち話。烏帽子岳のことは知っていて、今は廃道化した登山道も知っていた。ネットの記録では10年前に既に廃道化が始まっていたので、形跡は残るが今では根曲がり灌木に覆われているだろう。立ち話の前に濡れたものを乾いた路面上に広げておいたので、帰る頃にはあらかた乾いてくれた。


 次のチャンスには今回登らなかった阿彌陀山に挑戦したいところ。私の力量では尾根伝いは無理なので、不動川上流部から北西尾根のどこか枝尾根に取り付いて北西尾根を登るのが一番安全そうだ。不動川までのアプローチは今回と同じルートで1350m峰経由で1320m鞍部から下るのが、烏帽子岳北尾根の残雪が使えるうちは一番楽なコースだろう。さて、今シーズン中に行けるか? 現状では業務多忙で大型連休の半分くらいは出社予定であり、通常の週末と同じく土日のみの休みとなりそうだ。他に行きたい山と天気との兼ね合いでどうなるのか分からない。

 

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